厚生労働省は、令和6年度の「過労死等の労災補償状況」を取りまとめ、公表しました。
※過労死等とは、業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害をいうと定義されています。
ポイント
・過労死等に関する請求件数 4,810件(前年度比212件の増加)
・支給決定件数 1,304件(前年度比196件の増加)
・業務災害に係る精神障害に関する事案の支給決定件数は1,055件で、初めて1,000件を超える
以下では、「業務災害に係る脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」、「業務災害にかかる精神障害に関する事案の労災補償状況」についてご紹介いたします。
業務災害に係る脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況
運輸業・郵便業が最多
請求件数は1,030件で、前年度比7件の増加
うち死亡件数は255件で、前年度比8件の増加
支給決定件数は241件で、前年度比25件の増加
うち死亡件数は67件で、前年度比9件の増加
時間外労働時間別の傾向としては、評価期間1か月では「100時間以上~120時間(18件)」が最も多く、評価期間2~6か月における1か月平均では「80時間以上~100時間未満」(63件)が最も多くなっている。
業種別の傾向としては、「運輸業・郵便業」(88件)、「宿泊業・飲食サービス業」(28件)、「製造業」(24件)の順に多く、年齢別の傾向としては、「50~59歳」(129件)、「40~49歳」(60件)、「60歳以上」(44件)の順に多くなっている。
業務災害に係る精神障害に関する事案の労災補償状況
支給決定件数は1,055件で初めて1,000件を超える
請求件数は3,780件で前年度比205件の増加
うち未遂を含む自殺の件数は202件で前年度比10件の減少
支給決定件数は1,055件で前年度比172件の増加
うち未遂を含む自殺の件数は88件で前年度比9件の増加
出来事別の傾向をみてみると、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」(224件)、「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」(119件)、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた(カスハラ)」(108件)の順に多くなっている。
業種別の傾向としては、「医療・福祉」(270件)、「製造業」(161件)、「卸売業・小売業」(120件)の順に多く、年齢別の傾向としては、「40~49歳」(283件)、「30~39歳」(245件)、「20~29歳」(243件)の順に多くなっている。
厚生労働省:令和6年度「過労死等の労災補償状況」を公表します
補足:精神障害の労災認定基準の見直し
2023年に心理的負荷による精神障害の認定基準が改正され、「業務による心理的負荷評価表」の具体的な出来事に「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメント)が追加されています。
この精神障害の労災認定基準の見直しも、請求件数増加の一因であると考えられます。